サステナビリティ産業の生産技術を進歩させる

製紙プロセスでの主なトラブルとして、抄紙機の汚れによる欠点や、抄紙工程での水質悪化に伴う脱水状況の変動による断紙などが挙げられます。これらのトラブルが起きると設備の停止・再稼働が必要になるだけでなく、製品に適さない損紙が発生します。損紙そのものは製紙原料として再利用可能ですが、再び紙を作るには多量の水とエネルギーが必要となるため、欠点や断紙の低減は生産性向上だけでなく環境負荷低減に大きく貢献します。製紙工場では欠点や断紙をはじめとする水質悪化に由来するトラブル抑制のために様々な水処理薬品が使用されていますが、水処理薬品の添加量調整を含め、製紙プロセスの運転管理は担当者の経験に基づくところが多く、製品の品質と操業の安定化は永年の課題となっていました。
クリタグループは、センサーとAIの活用により製紙プロセスのスマート化を実現するシステムを開発しました。本システムは、これまでに培ったクリタグループの知見に加え、新たに開発した気泡センサー、凝集センサーによる製紙プロセスでのスラリー^※の物性や水質、生物活性センサーによる排水処理状況などのデータと製品品質との相関を解析し、トラブル発生を予測することで水処理を最適化するものです。本システムにより損紙の発生とそれに伴う環境負荷を低減可能となります。

• ※ パルプなどの製紙原料が水中に分散した状態のもの。

半導体製造工場では、不純物を極限まで取り除いた理論純水に限りなく近い水である超純水を製品の洗浄用に使用しています。超純水を製造するシステムは主に前処理、一次純水処理およびサブシステムで構成されており、これらで使用される電力の多くは、水を送るポンプ類によるものです。近年では気候変動問題への対応のため、高純度な水質の確保と電力使用量の低減を両立する超純水製造システムが求められていました。
クリタグループは、省エネルギー型一次純水システムを開発しました。本システムは、水中のイオン類などを除去するRO膜設備において、従来に比べ低い圧力で分離可能な膜を採用することで、ポンプの電力使用量を低減しています。RO膜処理の低圧化を図ると処理水質が悪化するという課題がありましたが、RO膜設備への給水にNaOHを添加することでRO膜での除去が難しい物質の除去率を向上させ、さらに独自の通水方式を採用した電気再生式脱イオン装置と組み合わせることで、高純度な水質の維持と省エネルギー化を実現可能となります。