持続可能なエネルギー利用を実現する気候変動問題への取り組み

基本的な考え方

クリタグループは、気候変動問題を世界共通で取り組むべき喫緊の課題と捉えており、TCFD 提言に基づき、事業活動に伴って発生する温室効果ガス(GHG)の排出の継続的な削減と、事業を通したお客様における GHG排出削減に取り組んでいきます。

推進体制

クリタグループは、栗田工業の執行役員であるサステナビリティ推進本部長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、クリタグループにおける気候変動問題への取り組みを統括・推進しています。気候変動問題への取り組み全般の監督を担う取締役会は、経営会議から原則として年2回報告を受けます。経営会議は、サステナビリティ推進委員会より気候変動問題への取り組み状況について適宜報告を受け、その内容を審議の上、必要な施策を決定します。

機会とリスクを踏まえた施策

クリタグループは、IPCC SR1.5およびIPCC RCP8.5などで描かれる2種類のシナリオ(1.5℃および4℃)※1に基づき、「発生可能性」と「影響度」の2軸で短期・中期・長期※2のリスクと機会を特定し、クリタグループの施策を策定するとともに一部のリスクと機会については事業への財務影響を評価しています。

分類 リスク・機会の内容 時間軸 事業への財務影響・施策
政策と法 リスク 炭素税の導入や増加 中~長期

<事業への財務影響(2050年度時点)>

  • 1.5℃:22億円※3
  • 4℃:なし

<施策>

  • Scope1+2:2030年度までに推定で約11億円の費用を投じ、電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などにより100%削減。
  • Scope3:2030年度までにCSVビジネス※4の推進に加え、低炭素原料の調達などにより基準年比30%削減。
リスク GHG排出量の多い製品やサービスへの規制 中~長期

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。
  • 電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。
  • バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。
機会 GHG排出量の少ないエネルギーへの転換を支援する政策インセンティブの普及 中~長期
テクノロジー リスク/
機会
GHG排出量の少ない製品やサービスへの転換が進む 短~長期
市場 リスク 化石燃料関連セクターからの需要減少 中~長期

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化や、バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大による事業のシフト。
リスク 原料、エネルギーコストの高騰 中~長期

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。
  • 電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。
  • バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。
機会 DXの加速による電子産業の需要増加 中~長期
物理的な影響 リスク サイクロンや洪水などによる工場停止や工期遅延の増加 短~長期

<事業への財務影響(2020年度以降)>

  • 1.5℃と4℃共通:該当の国内生産拠点で約157億円/年

<施策>

  • 約14百万円を投じ、1拠点で止水板を設置済。
  • 水害対策など、自然災害に備えた事業継続体制の継続的強化。
機会 冷却設備の稼働率増加 短~長期

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。
  • バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。
資源効率 機会 効率的な生産や流通プロセスの普及 短~長期
機会 水使用量の削減 短~長期
エネルギー源 機会 GHG排出量の少ないエネルギーの普及 短~長期
機会 分散型エネルギー源への転換 短~長期
製品とサービス 機会 GHG排出量の少ない製品およびサービスの需要増加 短~長期

<事業への財務影響(2027年度以降)>

  • 1.5℃:約3,500億円/年※5
  • 4℃:なし

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。
  • 電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。
  • バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。
機会 GHG排出削減に向けた多様な技術ニーズの増加 短~長期
レジリエンス リスク/
機会
燃料、水資源などの代替や多様化 短~長期

<施策>

  • デジタル技術の活用や設計などの見直しによる製品やサービスの低炭素化。
  • 電気自動車の導入や再生可能エネルギーの採用などによるScope1および2の削減。
  • バイオマス発電、エネルギー回収、資源回収、排ガス処理、CO2回収、電池関連事業などGHG削減に寄与するCSVビジネスの展開・拡大。
  • ※1 気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)が予測する、工業化以前の水準からの気温上昇が1.5℃となるシナリオおよび最も気温上昇が高いシナリオ。
  • ※2 短期(1~3年)、中期(3~5年)、長期(5~20年)と設定。
  • ※3 (事業展開地域のScope1および2排出量+Scope3カテゴリ1排出量)×(事業展開地域の炭素価格)の2050年度予測に基づく試算。
  • ※4 従来に比べ節水・GHG排出削減・廃棄物の資源化および資源投入量の削減に大きく貢献する製品・技術・ビジネスモデル。
  • ※5 GHG削減に寄与する新規のCSVビジネスのSAM(Serviceable Available Market)を試算。

指標と目標

クリタグループは、サステナビリティへの取り組みを推進するため、2023年度から新たに重点的に取り組む8つのテーマを「クリタグループのマテリアリティ」として定めました。気候変動問題への取り組みとなるテーマ2においては、パリ協定に沿った取り組みとするため、SBTiが示す手法に沿い、2019年度を基準年として「Net-Zero水準」にて長期目標を新たに設定し、Scope1、2およびScope3の削減に取り組んでいきます。さらに、CSVビジネスによるGHG削減貢献量の中期目標を新たに設定し、産業・社会におけるGHGの削減に資するソリューションの開発・提供、および低炭素な事業活動の実践により、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に貢献していきます。
2021年度は、Scope1+2は顧客需要の回復に伴う生産拠点の稼働率の上昇により前年比で微増しました。一方で、Scope3は主要排出源となっているポンプ類の調達実績の減少により前年比で減少しました。なお2022年度は、Scope1+2は上記施策の実施により前年比で減少し、Scope3は受注増による増加が低炭素化による削減を上回るため前年度より増加する見通しです。

  • ※ 企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、工業化以前と比べ1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進するイニシアチブ。
気候変動問題への
取り組みテーマ
指標 中・長期目標 実績
2027年度 2030年度 2050年度 2019年度 2020年度 2021年度
2.脱炭素社会実現への貢献 Scope1+2 73% 100% Net-Zero -
(44千t-CO2
7%
(41千t-CO2
5%
(42千t-CO2
Scope3 22% 30% Net-Zero -
(2,584千t-CO2
6%
(2,440千t-CO2
22%
(2,027千t-CO2
CSVビジネスによるGHG削減貢献量 1,500
千t-CO2
279
千t-CO2
294
千t-CO2
367
千t-CO2
  • ※ Scope1+2および3は2019年度(基準年)からの削減割合。

Scope1、2および3目標達成に向けた削減計画

指標の基準年となる2019年度におけるクリタグループのCO2排出量は、Scope1+2が約1%、Scope3が99%となっています。Scope1+2は、その大半はScope2の電力由来のCO2排出であるため、再生可能エネルギーの採用を進めると共に、ガソリン車から電気自動車に順次切り替えていきます。Scope3は、約70%はカテゴリ11「販売した製品の使用(主に水を送るために用いられるポンプなどの回転機)」によるCO2排出であり、クリタグループの競争優位性向上との両立を図るため、CSVビジネスの仕組みを活用してお客様に提供するソリューションの低炭素化を推進していきます。