サステナビリティ第三者意見・第三者意見を受けて

評価意見

2022年度はクリタグループの中期経営計画「Maximize Value Proposition 2022(MVP-22)」の最終年度であり、マテリアリティについても総括の年となりました。7つのマテリアリティとそれらに関する12のKPIへの取り組み、およびその取り組みの妥当性検証のためにステークホルダーエンゲージメントを実施することで、CSR活動を推進し基盤を強化されてきました。基礎テーマは維持目標でありすべて達成、成長機会テーマ4つの内、顧客環境改善活動では自社で管理出来ない部分が含まれているため、目標を達成できないものがありました。目標達成に顧客側の意思決定の影響が大きく、これは以前から課題となっていましたが、このような理由による未達成の場合の評価の在り方が問われると思います。2023年度にスタートした新中期経営計画「Pioneering Shared Value 2027(PSV-27)」においては、さらに対象を拡大したマテリアリティ「循環型経済社会構築への貢献」を新たに設定しており、顧客とのより親密な関係性の構築が目標達成への課題の解決につながるのではないかと考えます。水という最重要テーマにおける新たな取り組みやクリタグループと顧客との協創によって、さらに社会の環境負荷が削減されることを期待しています。

PSV-27計画の新マテリアリティは8つ、KPIは24に拡大されます。特に「水資源の問題解決」に関して、WRCの設立会員として水資源保全・回復のための企業行動に対する世界共通ルールや情報プラットフォームの構築に貢献していくという取り組みは、クリタグループが過去に蓄積してきた顧客環境改善効果の算定モデルなどが役立つのではないかと思われます。現在、低炭素・脱炭素社会への移行が求められサステナビリティ開示基準(ISSB)等において情報開示ルールが構築されていますが、今後も対応を求められるテーマは増えていくと想定され、水資源という重要テーマのルール作りが早急に求められるでしょう。クリタグループが水資源のルール作りに貢献されることを期待しています。また新しく増えたマテリアリティとして、「戦略的な人材育成と活用」があります。人的資源の育成と有効活用は、他のマテリアリティを達成するために大切なことであり、このテーマを入れられたことについて高く評価できます。社員一人一人のパーパスが、クリタのマテリアリティ達成に貢献するような仕組み作りが必要となります。なおマテリアリティの選定には、外部の視点を入れることが重要ですので、今後はご留意ください。

クリタグループはこれまでも着実にCSR活動を推進してきました。PSV-27計画ではサステナビリティを経営の中核に据え、今後更にグローバル企業として活動を推進するためにサステナビリティ推進本部を設置し、組織として取り組む体制をより充実されました。海外での人権課題への対応や人的資源に係る部分など、これから活動が期待される項目もありますが、「水資源の問題解決」「脱炭素社会実現への貢献」「循環型経済社会構築への貢献」といったテーマは、これからのサステナビリティを牽引する活動となると思われます。今後の進め方が大変重要になると思いますので、可能ならば年に1回外部の意見を聞く場を用意し、方向性や推進の程度などについて意見交換する機会を設けられてはいかがでしょうか。意見交換の結果を外部へ公表することで、さらにクリタグループへの理解と共感が進むと思います。

なお環境パフォーマンスデータの収集および社会情報について、簡単なチェックをしましたが、特に重要な間違い等はありませんでした。

國部 克彦(こくぶ かつひこ)氏

國部 克彦(こくぶ かつひこ)氏

國部 克彦
神戸大学大学院経営学研究科教授。大阪市立大学博士(経営学)。
2014年-2016年および2022年から現在まで神戸大学経営学研究科長・経営学部長。2019年から2021年まで神戸大学副学長。日本MFCAフォーラム会長。日本フィランソロピー協会「企業フィランソロピー大賞」審査委員長。主著に、『アカウンタビリティから経営倫理へ』(有斐閣)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版社)など多数。

梨岡 英里子(なしおか えりこ)氏

梨岡 英里子(なしおか えりこ)氏

梨岡 英理子
公認会計士/株式会社環境管理会計研究所 代表取締役。 大手監査法人、(財)地球環境戦略研究機関 関西研究センター主任研究員を経て2004年から(株)環境管理会計研究所に参加。日本公認会計士協会 組織内・社外役員会計士調査研究専門委員会 サステナビリティ部会委員。大阪ガス株式会社など上場企業3社の社外役員。

第三者意見を受けて

執行役員
サステナビリティ推進本部長
田辺 尚

國部先生、梨岡先生には貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。
クリタグループは、MVP-22計画ではCSRを経営の中核に据え、マテリアリティを「CSRに関する方針」として定め、指標・目標を設定しその達成に取り組んできました。また、GRIスタンダードやTCFD等の国際的な基準を踏まえた情報開示と各ステークホルダーとのエンゲージメントに努め、得られた課題をCSRの取り組みの検証に生かしてきました。これらの結果、安全、公正、人権といったテーマに関する「基礎テーマ」ではすべての指標・目標を達成するとともに、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを開始する等、経営・事業活動の基礎を強化できたと捉えています。一方、水、CO2、廃棄物に関する「成長機会テーマ」については、CSVビジネスの展開による顧客環境価値の創出を継続して増加させることができたものの、CO2排出削減量以外の目標は未達成となりました。特に、クリタグループの使命である「水」に関する指標が目標を達成できなかったことは重く、ご指摘の通り課題として認識しています。

2023年度からスタートしたPSV-27計画では、経営の中核に据える概念をCSRからサステナビリティへと広げ、企業ビジョン達成に向けた重要課題を「クリタグループのマテリアリティ」として定め、指標・目標も拡充しました。マテリアリティの見直しは、E&S委員会および社外取締役による検討をベースに、経営会議メンバーを中心とする中期経営計画の検討委員会で討議を行い、取締役会で決議しています。指標・目標は、その数の増加だけでなく、質の面でも強化できたと考えています。例えば、MVP-22計画から引き続き取り組む「Scope1+2の削減割合」は、2030年度に100%削減と挑戦的な目標としたほか、複数のマテリアリティへの取り組みにおける自然資本のトレードオフ解消に取り組むため、節水1m³当たりのGHG排出量を半減させることを目標とした「GHG排出量・節水貢献量比の削減割合」を新たに設定しています。
量・質ともに拡充したマテリアリティへの取り組みをグループ一体となって取り組むために、関連部署を集約したサステナビリティ推進本部を設置するとともに、E&S委員会をサステナビリティ推進委員会へと改称しました。また、2023年6月の定時株主総会での決議により当社は指名委員会等設置会社へ移行しており、今後は多様なステークホルダーの視点に基づきマテリアリティへの取り組みに対する監督が強化されます。私はサステナビリティ推進本部長およびサステナビリティ推進委員会の長として、変化が大きく速いサステナビリティに関する国際的な動向やステークホルダーエンゲージメントから得られた課題を踏まえつつ、社会との共通価値につながる「共通価値テーマ」では水に関する課題解決の価値を捉え直すことで社会・環境へのインパクトを増大させられるよう、また、経営・事業活動の基礎とすべき「基礎テーマ」ではステークホルダーの皆様の信頼を高められるよう、グループを牽引して参ります。

MVP-22計画で取り組んでいたCSRもPSV-27計画で取り組むサステナビリティも、根底にあるのは社会とともに持続的に成長するという意思であり、この意思は創業当初から変わらずクリタグループで継承されているものです。この意思を言語化したものが企業理念「“水”を究め自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」であり、クリタグループはこれからも企業理念の実現に向け、邁進していきます。