CSRの取り組み第三者意見・第三者意見を受けて

評価意見

2021年度の統合レポートで開示されているクリタグループの価値創造ストーリーは、「水に関する知」を核に、顧客価値の最大化と社会との共通価値を創造することで利益を拡大するというストーリーです。今までクリタグループが顧客価値を提供していたことから一歩進んで、水を通して顧客価値の最大化と社会との共通価値を創造し、持続可能な社会に貢献していく道筋を示されました。方向性と進め方がはっきり見え、素晴らしい企業理念の具現化であると評価されるものです。そして、顧客価値の最大化の具体的な施策として、CSVビジネスへの取り組みが示されています。社会価値の高いビジネスは収益性も良くならなければいけない、という考えから、CSVビジネスを推進することで、クリタグループも社会も持続可能的に発展していくことを志向されています。これは中期経営計画「Maximize Value Proposition 2022(MVP-22)」において重点施策に挙げられており、MVP-22計画の5カ年計画の後半に入るにあたりさらに強化されました。クリタグループの開示情報を見ていても、経営戦略の中に社会価値を創造する指標がしっかりと組み込まれており、サステナビリティと経営戦略の統合思考が具現化されていると評価できます。「水」を通じた様々な価値創造はクリタグループにしかできないことであり、今後さらに拡大していくことと期待しています。

今年、「成長機会テーマ」の「4.水資源の問題を解決する」に新たに追加された目標に「水資源に関する問題の改善で貢献する人数」が挙げられました。これはWater Resilience Coalitionの設立会員としての世界規模での社会貢献であり、クリタグループの長い時間軸でのCSR活動として今後の期待が高まります。

また気候変動問題への対応として取り組まれている、クリタグループのCO2排出量のほとんどを占めるScope3の削減や、現在検討されている顧客の企業価値向上をメリットシェアする試みについては、生み出した無形の価値を金額換算する「インパクト評価会計」のような仕組みの構築を検討されると良いと思います。この仕組みにより、顧客価値の最大化を実現するCSVビジネスをさらに進化させ、顧客の価値向上までを価値提供するビジネスとして「CSV-ESGビジネス」を創出する可能性もあるのではないかと期待します。

環境パフォーマンスデータについては、2020年度に新たに連結子会社になったアメリカの事業会社を含めたグループ全体が対象とされ、クリタグループの全貌がわかるような仕組みが構築されています。しかしながら、ESGのうちSに関する情報(社会性情報)の中には、国内のみまたは親会社単体が対象である項目もあります。国が違えば法律が異なり、社会性情報はその影響を大きく受けるためマネジメントが難しい側面がありますが、ステークホルダーからみて、クリタグループがグローバルで一体となって活動されていることを知るために、またグループの全貌を知るために、情報の開示が必要ではないかと思われます。

なお環境パフォーマンスデータの収集について、簡単なチェックをしましたが、特に重要な間違い等はありませんでした。

國部 克彦(こくぶ かつひこ) 氏

國部 克彦(こくぶ かつひこ) 氏

神戸大学大学院経営学研究科教授。大阪市立大学博士(経営学)。2014年~2016年神戸大学経営学研究科長・経営学部長、2019年から2021年まで神戸大学副学長。日本MFCAフォーラム会長。ISO/TC207/SC1WG13議長。主著に、『アカウンタビリティから経営倫理へ』(有斐閣)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版社)など多数。

第三者意見を受けて

常務取締役
グローバル営業本部長
E&S委員会委員長
鈴木 恭男

國部先生には貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。
クリタグループは、企業理念「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」の実現を目指し、CSRを中核に据え経営をしています。2020年度はCSRに取り組む目的の一つである「クリタグループと社会の共通価値を創造し最大化する」ことをさらに進める一年となりました。この目的を具現化し、かつ2018年度に始まった中期経営計画「MVP-22」の計画達成に向けた取り組みを強化するために、本計画の重点施策でもあるCSVビジネスの取り組みにおいて収益性を新たな管理指標として追加しました。

加えて、世界共通の社会課題への長期的な取り組みも開始しています。一つは、グローバルでの水資源の保全と回復への取り組みとして、WRCに設立会員として参画しました。水資源の保全に関する中長期目標を定めるとともに、クリタグループの知見を活かし、水資源の問題解決に関心のあるすべての人がアクセス可能で、情報収集や具体的な解決策を導くことのできる総合プラットフォームの開発に取り組んでいます。もう一つは、気候変動の問題への対応として、TCFD提言に基づき気候変動によるリスクと機会、事業戦略への影響について分析を行った上で長期的なCO2の排出量削減目標を定めました。

一方、CSRの取り組みにおけるクリタグループの課題としては、國部先生からのご指摘の通り、ESGのうちSに関する情報について、ステークホルダーの期待や関心を踏まえ、開示の強化に取り組む必要があります。グローバル営業本部長として国外関係会社を統括し、かつE&S委員会委員長としてCSRの諸活動を統括する責任者として、グローバル全体での取り組みをさらに推進していきます。また、國部先生が示された「CSV-ESGビジネス」の概念は、まさにE&S委員会にて現在検討していることであり、私たちが目指している姿をより的確に表していただいていると考えます。私たちクリタグループが創出する有形・無形の価値を、お客様や社会に訴求する仕組みの構築について、引き続き検討していきます。

私たちクリタグループは、社会課題を起点に事業の在り方を捉え直し、「水」を通してお客様や社会に新たな価値を提供していきたいと考えています。2020年度に制定した価値創造ストーリーを機軸に、社会的価値にこだわって事業を推進することで、社会とともに持続的、長期的に成長していきます。