Press Release

2018年

2018年5月30日

米国ベンチャー企業 Fracta, Inc.の株式を取得し、子会社化
~AI/MLの最先端技術を有する水関連企業との協業により、
デジタルビジネス事業展開を加速~

栗田工業株式会社(本社:東京都中野区 社長:門田 道也)は、このたび、米国の水道分野において人工知能/機械学習(AI:Artificial Intelligence/ML:Machine Learning)を活用した水道管の劣化予測ソフトウエアサービスを展開するFracta(米国・カリフォルニア州 CEO:加藤 崇、以下「Fracta社」という)の持株会社、Fracta, Inc.(米国・デラウェア州 CEO:加藤 崇)との間で出資契約を締結しました。出資金額は約37百万USドル(約40億円)であり、新たに発行されるFracta, Inc.の株式の引受けに加え、既存株主からの発行済株式の取得を組み合わせることにより、同社株式の過半数を取得し、Fracta, Inc.は当社の連結子会社となります。なお、2020年から最大4年間をかけ、同社を完全子会社化する予定です。
本出資は、当社グループが中期経営計画で重点施策として掲げる「新事業の創出とイノベーション推進」の実現に向け、戦略投資の一環として実施するものです。当社が蓄積してきた水処理技術・ノウハウと、Fracta社が有するAI/MLの最先端技術を融合することで新たな価値を創造し、水資源の問題をはじめとする社会課題の解決に貢献していきます。

Fracta社は、ロボットベンチャーでの実績等で連続起業家として高い知名度を持つ加藤 崇 氏と、ラース・ステンステット(Lars Stenstedt)氏により2015年に設立されたシリコンバレーのベンチャー企業で、米国の水関連市場におけるデジタルビジネスの先駆者として注目を集めています。同社は、AI/MLによるビッグデータ解析技術を活用し、地中にある水道管の状態(経年劣化の状況)や交換が必要な箇所(地域)を高精度に、かつ、短時間で予測するソフトウエアサービスを展開しています。
米国において、水道管劣化状況の把握は、配管の使用年数に基づく簡易的な予測や、現場設備の目視確認等により実施することが一般的ですが、予測精度が低く、適切な管理や更新がなされていないことが問題となっています。米国では現在、老朽化した水道管の破損・漏水が年間24万件発生し、社会課題として認識されており、2050年迄に水道管更新に必要な費用が1兆ドルと予測されています。水道管の劣化予測ソフトウエアサービスの分野でも年間約20億ドルの潜在的市場規模が見込まれます。
Fracta社が開発したソフトウエアサービスは、蓄積した水道管の過去破損データと、劣化要因となる配管の素材や使用年数をはじめ、土壌、気候、人口などの地理的データを組み合わせ、1000以上の項目の相関を分析するアルゴリズムによって、水道管の破損確率や最適な交換時期を導き出します。これにより、水道インフラの効率的な管理と更新頻度の最適化を実現し、設備投資やメンテナンス費用の大幅削減を可能にします。今回の出資により、同社では事業拡大に向けた営業体制やソフトウエアの機能強化に向けた開発体制を拡充し、米国全土での市場展開を加速していくことで、5年後に売上高30百万ドル以上の事業規模を目指します。

栗田工業は、IoT/AIを水処理ソリューションの重要基盤の一つと位置付け、ビジネスモデル・ビジネスプロセスの変革を進めています。今回の出資を通じ、AIとMLの最先端技術およびノウハウを取得し、当社の水処理技術やサービスに適用することにより、水と環境の分野でIoT/AIを活用した新たなデジタルビジネスの創出、拡大を図っていきます。また、Fracta社の水道管劣化予測ソフトウエアサービスは、お客様に設備投資やメンテナンス費用の削減等の経済的価値を提供するだけでなく、水資源の問題解決を通じて人々の生活の安心と豊かさに貢献するものです。同社とともに、AI/ML技術によるソフトウエアサービスをさらに進化させ、将来的には世界各国の水資源の問題解決につながる事業の展開を目指します。

クリタグループは、本年4月にスタートした中期経営計画「MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)」において、「水資源問題の解決」「持続可能なエネルギー利用の実現」「廃棄物の削減」「産業の生産技術進歩」を重点的に取り組むべき社会課題と捉え、社会との共通価値の創造に注力しています。今後も、さまざまなパートナーとの協創を進め、先端技術を活用したイノベーションを実現することで、水と環境にかかわる社会課題の解決に貢献してまいります。

【 Fracta社 CEO 加藤 崇 氏のコメント 】

「水処理専業の事業会社でグローバル企業でもある栗田工業に、私たちFractaの価値やビジョンを評価頂いたことは光栄であり、今後の協業に期待を膨らませています。
AIやMLによる最先端テクノロジーにより、私たちが今後数年でもたらす変化は、水道管の管理方法を根本から変え、水道事業という設備集約型産業の在り方そのものをも変えていくことになると確信しています。
米国をはじめとして、水道インフラの維持および効率的管理が社会問題としてクローズアップされる中で、Fractaが解決すべき課題と、解決に必要な製品やサービスの形態を栗田工業とともに考え、構築していくことで、事業展開の加速と新たな事業領域の創出に邁進していきたいと思います」

【 栗田工業代表 取締役社長 門田 道也のコメント 】

「Fractaに出資する機会を得ることができ、嬉しさとともに大きな興奮を感じます。今回の出資を通じ、成長を支援し、同社の企業価値の向上に貢献したいと思います。
同社が有するAI/ML技術は、水処理ソリューションを大きく進化させるものと期待しています。当社独自の商品・サービスと融合し、Fractaとのシナジーを創出することで、これまでにない「独創的な価値」を創造するデジタルビジネスの展開が可能になると考えています。
また、Fractaをシリコンバレーの情報・技術の収集拠点として活用することで、今後もスタートアップ企業や外部機関とのオープンイノベーションを強力に推進していきたいと思います」

Fracta, Inc.(Fractaの持株会社)の概要

社名 Fracta, Inc.
設立 2017年4月
所在地 米国デラウェア州
株主資本 7,402千USドル(2017年12月31日時点)
代表者 CEO, 加藤 崇

Fracta社(事業運営会社)の概要

社名 Fracta
設立 2015年6月
所在地 米国カリフォルニア州
代表者 CEO, 加藤 崇
事業内容 AI(人工知能)、ML(機械学習)に基づく水道管の劣化予測ソフトウエアサービス
従業員数 12名(2018年5月30日現在)