Press Release

2010年

2010年4月22日

発電所向け環境負荷低減に貢献する排水処理の新技術を開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:齊藤 浩)は、石炭火力発電所の排水における規制物質セレンを除去し、環境負荷を大幅に低減する排水処理の新技術を開発し、1号機を国内電力会社に納入予定です。
セレン(*)は石炭等に含有される物質であり、平成6年より排水規制の対象項目となっています。また、排水中のセレンは効率良く除去することが一般的に難しいとされており、石炭を使用する火力発電所においても効果的にセレンを除去し、安定的な排水処理を行うための技術が求められていました。
当社では、新たな排水規制や発電所を持つお客様からのニーズに対して、発電所排水向けの新たなセレン除去技術の開発に取り組み、このたび国内電力会社との共同研究により、複合金属還元体を用いた新技術「セレン含有排水処理システム」を開発しました。
本技術によりセレンを排水基準値である0.1mg/L以下の濃度に処理することができるだけでなく、従来技術と比べて発生汚泥量の低減を可能にします。
今後、当社では、環境負荷低減効果の高い技術として、国内外の電力会社や石炭火力発電所向けに本システムの適用を推進していく予定です。

  • 金属セレンは赤色または灰色の固体であり、原子番号34番の元素(Se)。自然界では単体で存在するが、多くはセレン化物として存在し、多くの金属とセレン化物をつくる。
    石炭中には、微量含まれている。

1. 開発の背景

石炭を使用する石炭火力/ガス化発電所におけるガス処理工程では、セレンを含む排水が発生します。国内において、セレンは水質汚濁防止法にて平成6年より排水規制の対象項目となっており、各企業は排水中のセレン処理を行い排水基準値(0.1mg/L)を達成することが求められています。

2. 当社の取り組み

当社では、これまでも石炭火力発電所向けに多数のセレン処理システムを納入してきましたが、お客様の環境負荷低減ニーズや排水規制の強化に対応する新たなセレン除去技術の開発に取り組み、従来技術と比べてセレン除去性能が高く、副生物として発生する汚泥処分量が少ない新技術「セレン含有排水処理システム」を開発しました。

3. 新技術「セレン含有排水処理システム」について

セレンは、石炭の燃焼により二酸化セレンとしてガス化し、ガス温度の低下と共に析出します。
電気集塵機で除去できなかったものは排煙脱硫装置に流入して水に溶解し、条件によりその一部は一般的な排水処理では除去が難しい物質「セレン酸イオン(6価)」へと変化します。
従来の技術では、排水中のセレン酸イオン(6価)を酸性条件下で金属還元体と接触させることにより還元し、その後凝集沈殿処理して除去する方式が主流でしたが、高濃度のセレン除去効果は十分ではなく、還元処理するための薬品コストや副生物として発生する汚泥量が増加してしまうことも課題となっていました。
今回、開発した「セレン含有排水処理システム」は、当社が新たに開発した複合金属還元体を適用したもので、強い還元力を活かして「セレン酸イオン(6価)」を「固体セレン(0価)」まで還元処理した上で効率的に除去し、安定的な排水処理を行うことを可能にします。

開発した技術は、従来技術と比較して以下の特徴があります。

  • (1)高濃度セレンを、水質汚濁防止法で決められた基準である処理水セレン濃度0.1mg/L以下まで安定して処理できます。
  • (2)副生物として発生する汚泥の発生量を3割削減でき、処分費も低減できます。
  • (3)還元処理するために使用する薬品の使用量を2割削減でき、ランニングコストも低減できます。

4. 今後の展開

国内の石炭火力発電における排水処理は、排水規制の強化に対応する最先端の高度処理が求められます。また近年、お客様において環境負荷の低減に貢献する技術開発に対するニーズが急速に高まっていることから、本排水処理システムの需要も拡大すると考えています。
当社では、国内の電力会社や発電所を持つお客様に向けて、既設設備の更新提案など本システムの適用を推進していくとともに、石炭火力の需要が拡大している海外においても本技術を積極的に展開していく予定です。

以上