Press Release

2008年

2008年11月12日

半導体プロセス向け超微量過酸化水素除去装置「ナノセイバー®」を適用した「超純水製造システム」の開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:藤野 宏)は、半導体プロセス向け超純水の高純度化要求に対応するため、過酸化水素除去装置「ナノセイバー®」を適用した超純水製造システムを開発しました。
「ナノセイバー®」は、過酸化水素を除去する特殊充填剤を使用し、次世代の超純水に求められる過酸化水素濃度1ppb未満を実現する装置です。半導体の加工が今後一層微細化していくことに伴って、これまであまり問題にならなかった過酸化水素によるウェハ酸化に起因するトラブルが生じる可能性があります。「ナノセイバー®」を超純水製造システムに適用することでこのトラブルの回避が期待できます。
当社では、今後建設が予定される次世代半導体工場向けに、「ナノセイバー®を組み込んだ超純水製造システム」の拡販を積極的に推進していく予定です。

1. 開発の背景

  • (1)半導体プロセス向け超純水純度向上の取組み

近年、急速な半導体の微細化・大容量化の進展に伴い、最先端の半導体やウェハ製造プロセスで使用する超純水の更なる純度向上が求められています。

  • *1:超純水とは

超純水は、半導体・液晶の製造分野に用いられる洗浄水で、通常の水に含まれている微生物、微粒子、イオン、有機物、溶存酸素などのあらゆる不純物を極限まで除去し、限りなくH20、すなわち純度100%に近い状態にした水です。
携帯電話やパソコンなどに使われている半導体は、非常に多くの工程を経て、微細な回路が作られています。その工程ごとに様々な化学物質が使用されていますが、次の工程に進む前に、回路に付着している余分な化学物質を洗い落とす必要があり、そこに超純水が使われています。
超純水は、半導体の微細化・大容量化と歩調を合わせて、水の純度を向上させてきました。今日の半導体回路の幅は100nm(ナノメートル)以下にまで微細化されており、このような超微細回路の洗浄にも対応できるよう、現在の超純水はその純度を極限まで高めています。

  • *2:現状および次世代の半導体に求められる超純水水質(当社想定値)
  回路線幅
水質項目 65nm以上 [現在の超純水] 45nm以下 [次世代の超純水]
抵抗率 >18.2MΩ・cm >18.2MΩ・cm
微粒子(0.03μm) <5個/mL <5個/mL
生菌 <0.1個/L <0.1個/L
有機物(TOC) <1ppb <1ppb
溶存酸素 <1ppb <1ppb
シリカ <0.1ppb <0.1ppb
重金属イオン <1ppt <1ppt
過酸化水素 ―(未管理*) <1ppb
  • *通常5~20ppb程度存在
  1. (注)ppbは十億分の一を表す単位、pptは一兆分の一を表す単位
  • (2)超純水中の過酸化水素について

現在、半導体製造に使用される超純水は、抵抗率、微粒子、有機物などの複数の水質項目を厳しく管理しており、溶存物質が1ppb未満(重金属イオンは1ppt未満)にまで純度を高めています。このような状況で、過酸化水素は、他の水質項目に比べ、比較的濃度が高く、5~20ppb程度、超純水中に溶存しています。
一方半導体メーカーでは、次世代半導体の製造工程において、従来まで超純水の管理項目に含めていなかった過酸化水素が、ウェハの酸化を招き、製品の品質不良をもたらす可能性があると考えていました。

そこで当社では、次世代半導体の製造工程で求められる超純水の水質を実現するために、過酸化水素濃度を1ppb未満に低減できる「ナノセイバー®」を開発しました。

2. 超微量過酸化水素除去装置「ナノセイバー®」について

  • (1)商品概要

「ナノセイバー®」は、過酸化水素を除去する特殊充填剤を使用し、次世代の超純水に求められる過酸化水素濃度1ppb未満を実現する装置です。

  • (2)超純水製造システムへの適用

「ナノセイバー®」を超純水製造システムに組み込むことで、高純度で安定した水質の超純水を提供できます。
すでに当社は、電子関連のお客様より「ナノセイバー®」を組み込んだ超純水製造システム」の1号機を受注し、本年7月に納入しました。

  • (3)今後の展開

今後、半導体の技術革新が急速に進む中で、過酸化水素まで除去した超純水は次世代半導体プロセス向けのスタンダードとしてニーズが高まると考えています。
当社では、これから建設が予定される次世代半導体工場やウェハメーカーなどに対して、「ナノセイバー®を組み込んだ超純水製造システム」を積極的に拡販していきます。