2004年
2004年12月8日
飛灰用ダイオキシン類分解剤「ダイオバニッシュ®UF」の販売を開始
栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区、社長:藤野宏)は、飛灰中のダイオキシン類の処理装置である加熱脱塩素化装置向けダイオキシン類分解剤「ダイオバニッシュ®UF」を開発、販売を開始しました。
【要旨】
「ダイオバニッシュ®UF」は、焼却炉から排出される飛灰中のダイオキシン類を加熱脱塩素化装置によって処理する際に用いるダイオキシン類分解剤です。従来、ダイオキシン類の分解には450~500度の高温で加熱する必要がありましたが、本薬剤を飛灰に混合することにより、従来よりも低い350~400度でダイオキシン類を効率よく分解することが可能となります。これにより、ダイオキシン類の安定処理を実現することはもちろん、エネルギーコスト・メンテナンスコストの削減にも貢献します。
【本文】
1. 開発の背景
平成14年(2002)12月にダイオキシン類対策特別措置法が施行され、従来焼却灰(燃え殻)と一緒に埋め立てられていた飛灰を個別に処理することが義務付けられました。同時に、平成12年(2000)1月15日以降に設置された焼却炉については、飛灰と焼却灰それぞれに含まれるダイオキシン類の量を3ng-TEQ/g以下にしなければならないという基準値が設けられました。また、焼却炉からのダイオキシン類総排出量(排ガス・飛灰・焼却灰)低減を求める客先も増えつつあり、総排出量の70~90%を占める飛灰中のダイオキシン類の処理ニーズが高まっていました。
この基準をクリアするための処理方法のひとつとして、加熱脱塩素化装置による加熱分解処理があります。同装置を使用することによって、ダイオキシン類を基準値以下にすることは可能になりました。しかし、ダイオキシン類を安定して処理するためには450~500度以上の高温で加熱する必要があり、その結果、飛灰性状によっては低融点塩類が溶融し装置に付着して運転不能に陥ったり、装置材質が著しく腐食するなどのトラブルの発生が予想されます。この不具合を避けるために温度を400度以下にすると、ダイオキシン類の分解反応よりも新たにダイオキシン類を作り出す再合成反応が活発に起こってしまうため、根本的な対応が急務となっていました。
2. 「ダイオバニッシュ®UF」について
1)「ダイオバニッシュ®UF」の特長
- 脱塩素化促進
還元性をもつ「ダイオバニッシュ®UF」が脱塩素化しやすい条件を整えて、ダイオキシン類の分解を促進します。 - 再合成防止
再合成反応については、飛灰中に含まれている塩化銅が触媒として作用することが知られています。そこで「ダイオバニッシュ®UF」は、塩化銅を不活性化させることで再合成を防止します。 - 高い安全性
「ダイオバニッシュ®UF」自体はもちろん、ダイオキシン類の分解によってできる分解生成物も無臭かつ無害であり、周辺環境に影響をほとんどあたえません。 - 高い汎用性
飛灰の性質や脱塩素化装置の形式に関係なく、安定した効果を得ることができます。
2)「ダイオバニッシュ®UF」適用によるメリット
- 加熱脱塩素化装置の長期安定運転が可能
350~400度という低温領域でもダイオキシン類の除去が可能なため、高温のために発生していた装置のトラブルがなくなり、長期的に安定運転が可能となります。さらに、加熱に必要なエネルギーコストやメンテナンスコストも削減できます。 - 加熱処理後の急速冷却設備などが不要
加熱処理後のダイオキシン類の再合成が抑制されるため、従来必要だった加熱処理飛灰の急速冷却工程などが不要となり、それに関わる設備が不要となります。
3. 「ダイオバニッシュ®UF」の市場
現在、加熱脱塩素化装置を導入している自治体・企業は約70客先あり、「ダイオバニッシュ®UF」の市場としては年間約20億円と推定しています。今後はダイオキシン類対策特別措置法に対応するため、加熱脱塩素化装置を導入する自治体・企業の増加が見込まれますので、市場規模は将来的に年間約50億円以上に拡大すると予想しており、5年後には売上高5億円を目標としています。
4. 今後の事業展開
栗田工業では、これまでにも焼却炉関連商品として、排ガス用ダイオキシン類生成防止剤「シャインスター®シリーズ」、高機能酸性ガス処理剤「ハイパーサー®シリーズ」、飛灰用重金属固定化剤「アッシュナイト®」を開発、販売してきました。今回「ダイオバニッシュ®UF」を新たに加えることによって、より幅ひろいお客様のニーズに対応することが可能となり、この分野における事業展開をさらに推進していきます。
以上