Press Release

2004年

2004年10月21日

紙パルプ用スライムコントロール剤「ファジサイド®」を本格発売

【要旨】

「ファジサイド®」は、強力な抗菌力を持つ製紙工場向けの無機系スライムコントロール剤(抗菌剤)です。単体では抗菌力のない無機化合物と、一般的なスライムコントロール剤である次亜塩素酸ナトリウムとを反応させて生成します。従来、製紙工場で一般的に使用されている有機系スライムコントロール剤では、抗菌力を高めるためには濃度を高める必要があり、それに伴って環境負荷も高まるという大きな課題がありました。「ファジサイド®」は、細菌はもちろんカビや酵母に対する高い効果に加え、環境負荷が低く、安全性も高い上、染料など製紙工程で使用する薬品に影響しないという、新しいタイプのスライムコントロール剤です。
当社では、5年前にイスラエルのベンチャー企業であるAYラボ社から「ファジサイド®」の日本における販売権を取得して以来、これまでに上質紙系を中心に約40台の抄紙機に適用し、その優れた効果を実証することができました。今後は、上質紙系抄紙機だけでなく、中性抄紙に変更されることによってスライムコントロールが必要となる板紙および新聞抄紙機でのスライムコントロール剤として「ファジサイド®」の適用拡大を目指します。さらに、有機物を高濃度含有する対象水系にも有効であること、金属に対して低腐食性であること、トリハロメタンなどの有害物質を生成しないことから、今後は製紙工程以外の一般水処理系への「ファジサイド®」適用を検討し、対象となる市場の拡大を目指します。

【本文】

1. 現状

製紙工場における抄紙白水循環系は、澱粉などの栄養源を含み、水温は30~40度、pHは4.5~8.0で微生物の増殖に適した環境です。微生物は抄紙系内の壁面で多糖類を主成分とする粘質物を産出しながら増殖し、パルプや填料を含んだスライムと呼ばれるバイオフィルムを形成します。このスライムが剥離し、品質や生産性の低下原因となるため、スライムコントロール剤による処理が行われています。過去30年間、スライムコントロール剤は、配合技術、適用技術で進歩はあったものの、素材面では30年以上前に開発された有機系の抗菌剤が使用されてきました。
近年では、古紙利用率の増大、中性抄紙化の進展、用水原単位の削減などにより抄紙系内では栄養源が濃縮し、スライムが益々増殖しやすい環境となってきました。さらに、抄紙機械の高速化、製品の軽量化などにより、わずかなスライムの剥離でも汚れや断紙などの問題が発生しやすくなるなど、抄紙工程におけるスライムコントロールが益々重要になってきています。

2. 従来のスライムコントロール剤の課題

近年の環境問題に対する社会的な意識の高まりから、安全性や環境負荷の低減に対する要望も強まってきたため、優れた効果を有するだけでなく、高い安全性と低い環境負荷を両立する新たなスライムコントロール剤が求められていました。

3. 「ファジサイド®」について

「ファジサイド®」は、単体では抗菌力のない無機化合物と、次亜塩素酸ナトリウムの2薬剤を反応させて生成します。生成した「ファジサイド®」は易分解性で長期安定性がなく、容器に梱包した形態で製品を供給することができないため、処理対象系の近くに専用添加装置を設置し、同装置内で生成しながら添加します。同装置は、内蔵されたコンピューターにより2薬剤を適切な割合で反応させ、必要量を任意に添加できるようになっています。なお、使用する次亜塩素酸ナトリウムは、水道水などの滅菌用として広く一般的に使用されていますが、菌類以外の溶存有機物と優先的に反応するという特徴があるため、製紙工程のように溶存有機物が多いところでは抗菌効果が弱くなるため、ほとんど使用されていません。

<「ファジサイド®」の特長>

「ファジサイド®」は下記の特長を持ち、従来の有機系スライムコントロール剤の課題をクリアしています。

  1. 短時間・低濃度ではるかに優れた殺菌効果を発揮
  2. 細菌だけでなくカビや酵母など幅広い微生物種にも有効
  3. 菌類以外の溶存有機物質による消費が少ないため、スライムの奥深くまで浸透し、増殖を抑制可能
  4. 酸化力が弱いため、ステンレスや炭素鋼などの金属材質への腐食性はなく、染料などの内添薬品に影響を与えない
  5. 低皮膚刺激性であり、変異原性も陰性で安全性が高く、消防法、毒劇物法、労働安全衛生法、PRTR法にも該当しないなど、取り扱いも容易
  6. 易分解性であり、その分解物は環境負荷の低い無機化合物で、トリハロメタンやダイオキシンなどの有害物質も生成しない
  7. 従来に比べ、ランニングコストを約40%削減可能(当社比)

4. 製紙工程での対象市場

製紙工程でのスライムコントロール剤の市場は年間35億円と推定されます。当社では、当面の事業展開を既に適用実績がある抄紙pH5.5以上の上質紙および、板紙、新聞の抄紙系に絞り、さらにオンサイト型の専用添加装置が必要となるため設置スペースのある中規模以上の抄紙機(生産量150t/日以上)を中心に事業を推進していく予定です。従って「ファジサイド®」の適用市場としては年間20億円程度を見込んでおり、本年度中に4億円、5年後に10億円の年間売上を見込んでいます。

以上