Press Release

2004年

2004年6月29日

安全性の高い汚泥用消臭剤ステンチカットM355およびK910を商品化

<はじめに>

今回商品化したステンチカットM355およびK910は、汚泥の腐敗を長時間防止することによって悪臭の発生を抑制する、安全性の高い汚泥用消臭剤である。

<背景>

現在、日本の下水道普及率は65%に達しており、管路が広範囲に張り巡らされたことによって滞留時間が増加し、下水処理場で処理する前に汚水や汚泥の腐敗が進み、悪臭の問題が深刻になってきた。悪臭の中でも硫化水素は高濃度になると健康被害や機器・施設の腐食をもたらし、維持管理費用の増大に繋がっている。さらに、民間工場においても生産効率アップや節水型のプロセスの導入が進む一方で、排水量を削減する方向にあることから、排水処理工程内に滞留する排水中の汚濁物質濃度が上昇し、結果的に有機物の腐敗による悪臭の問題を引き起こしている。特に、工場の近隣住民から苦情がある場合には、悪臭対策が急務となっている。

<従来の消臭剤の課題>

汚泥処理工程では、従来から亜鉛などを主原料とする金属塩系消臭剤が使用されてきたが、汚泥から発生する悪臭物質のうち代表的な硫化水素の除去効果は優れるものの、もう一つの代表的な悪臭物質であるメチルメルカプタンを抑制することはできず、さらに亜鉛はPRTR法や環境基準の対象物質となっている。また、硫化水素もメチルメルカプタンも除去可能である酸化剤系消臭剤は、消臭効果の持続時間が短く、脱水ケーキの消臭は難しかった。特に、汚泥と脱水ケーキの両方を消臭するためには、腐敗に関係する微生物活動を抑制することが重要であるものの強力な酸化剤や殺菌剤は安全性や後工程への影響の面から適用できず、これまで汚泥から脱水ケーキまで腐敗防止する技術は確立されていなかった。

<新消臭剤の開発>

今回、栗田工業が商品化したステンチカットM355およびK910は、従来の課題を解決する汚泥および脱水ケーキ両方に効果のある持続性消臭剤である。ステンチカットは、約10年前に東京都下水道サービス株式会社と共同で開発した汚泥用消臭剤であるが、M355およびK910はさらに機能向上を図ったものである。消臭剤の機能を向上させるにあたり、腐敗が汚泥中の微生物の活動によることに注目し、微生物活動が活発かどうかを間接的に測定する手法を確立し、腐敗のしやすさや消臭剤の効果を事前に予測することができるようになった。また、悪臭は気温や負荷変動によって発生する量が変化するため、貯留槽やホッパーの硫化水素を測定して薬注制御を行う装置を開発し、常に最適な消臭効果が発揮されるシステムとした。

<新消臭剤の特徴>

新しい消臭剤は、塩素や重金属を含まず危険物法、PRTR法に該当しない安全性が高い素材を使用しており、長時間腐敗を抑制することが特徴である。二つの薬剤を汚泥に添加すると、既にある硫化水素やメチルメルカプタンを除去するとともに、有効成分が固形物側に移行することから汚泥の腐敗が抑制され、脱水ケーキになっても長期間悪臭防止効果が持続する。本技術では、酸化作用を持つ素材と静菌作用を持つ素材を最適に組み合わせることにより、持続性のある消臭効果が達成され、関連する特許も複数出願している。

<対象市場>

対象とする施設は、下水処理場や食品工場などである。具体的には、硫化水素対策が必要な施設や、トラックで脱水ケーキを場外に搬出する際に周辺環境への悪臭対策が必要な施設、脱水ケーキをセメントに再利用するために塩素が使用できなかったり、肥料に再利用するため重金属が使用できない施設である。
今回商品化した製品の市場は、腐敗防止により悪臭を抑制する薬剤だけで年間20億円程度と考えられる。栗田工業では、新商品に採用されている腐敗防止技術を用いることで、2年後に3億円、5年後に10億円の売上を期待している。特に、今後汚泥のリサイクル需要が増加することが予想され、長時間持続する効果を最大の武器としてリサイクル市場への開拓を推進し、潜在市場の市場拡大にもつなげていきたい。

以上