環境改善活動トップ対談

クリタグループは顧客の企業価値向上に挑み、真のグローバル企業へと飛躍する 神戸大学大学院 経営学研究科 教授 國部 克彦氏 栗田工業株式会社 代表取締役社長 門田 道也

世界的な環境問題の急激な高まり、国際的な枠組みが大きく進展する中、「水と環境」を事業領域とするクリタグループが社会の期待をとらえ、グローバル企業としてどう事業展開していくべきか、環境経営の専門家 國部克彦氏と栗田工業社長 門田道也との対談を通してお伝えします。

「環境への貢献」が企業価値向上に直結する時代へ

門田近年、環境に関する国際的な枠組みが大きく進展したと感じています。昨年末、COP21*で史上初めて途上国を含むすべての国が参加する新たな温暖化対策であるパリ協定が採択されました。地球の気温上昇を産業革命前に比べ2℃未満に抑えるという世界共通の目標を設定し、各国が自主的に定めた温室効果ガス排出の削減目標に向け具体的な対策を実施し、5年毎に見直すとされています。このことは企業にどのような影響を与えるのでしょうか。

國部COP21は、すべての国が参加する国際的な枠組みとして、また、具体的な目標値に対し科学的根拠に基づいたシステムにより削減していこうと合意したことが大きな成果です。しかし、この合意について世界と日本の企業のとらえ方に差があると感じています。欧州では、「炭素にお金を付ける」炭素取引や環境税などで経済システムに削減活動を組み込むことで削減の実効性を上げようとしています。また、2℃未満という目標は、炭素を含む石炭や石油の使用に制約を加えることになり、すでにバランスシート上の資産として天然資源を保有する企業にとっては大きなリスクです。これらの仕組みができあがってしまうと、産業によって有利不利が出てくるため、欧米企業はCO2削減が経営に与える影響の大きさに強い関心を持っています。これに対し日本では、政府が業界団体に削減努力を検討してもらうレベルであり、日本企業の関心は総じて薄いと感じています。

門田欧米企業は、CO2削減が経済システムに組み込まれる意味をよく理解し、今から準備しているということですね。世界的に企業のCO2に対する感度が高まる中、状況をとらえ、いち早く対応した企業がグローバル競争を勝ち抜けると理解しています。

國部CO2削減への貢献をより明確に示すことが、その会社の企業価値向上につながる方向に世界は動いています。抽象的な削減努力を謳うのではなく、削減効果を「価値」として具体的に明示していくことを企業は重視するようになっていくと思います。

門田当社グループの製品・サービスによるCO2削減がお客様の企業価値向上につながる、また、削減効果を定量的に提示できるという意味で、水と環境を事業領域とする当社グループが戦略的にビジネスを仕掛ける非常に大きなチャンスであるととらえています。また、水に関する問題も環境に関する世界的な動向として目が離せないと思いますが、いかがでしょうか。

國部CO2削減と同様に水の有効活用も経済システムに組み入れられつつあり、企業が水の有効活用のためにしっかりと対応しているのかが重要になってきています。水はCO2と違いグローバルの問題でありながら、ローカルの問題でもあります。水は使う場所毎に対応するものですが、国が違ってもグループにとって一貫した考えに基づき対応できているか、社会的責任を重視する投資家はグローバル企業の水の有効活用に向けた考え方を注目しています。

神戸大学大学院 経営学研究科 教授 國部 克彦 氏

神戸大学大学院 経営学研究科 教授
國部 克彦 氏

門田ここまでのお話で、CO2削減や水の有効活用を十分にできていないことが、企業価値の低下につながり、経営上のリスクとなることがわかりました。環境負荷低減の活動が企業価値の向上という経営活動の中心に位置付けられつつあり、工場全体、さらには顧客や取引先も含めたバリューチェーン全体で、CO2削減や水の有効活用に取り組まざるを得ない方向に世界は動いていると思います。昨年度、乾式メタン発酵システムや水処理薬品と水処理装置の技術を組み合わせた冷却水ブロー水回収システムをお客様に採用していただきました。これらの独自性ある製品を活かして、単に環境負荷の低減効果だけで提案するのではなく、お客様の企業活動の中でCO2排出量や水使用量の削減につながるプロセスがあるかを評価し、どれだけ企業価値向上に貢献できるのかを、より明確に打ち出していきたいと思います。

國部企業価値向上への貢献を定量的に提示しているのが、まさに貴社の環境報告書の顧客環境改善効果ですね。この価値を早くから打ち出していたことに、先見性があったと思います。株主や投資家に対する価値だけでなく、社会に対する価値創造を打ち出すことでビジネスを拡大できる好機だと思います。

  • *COP21:2015年11月末からフランスのパリで開催された「気候変動枠組条約第21回締約会議」。
    COPとはConference of the Partiesの略で条約を批准した国が集まる会議のこと。
    COP3は「気候変動枠組条約第3回締約会議」で、1997年に日本の京都で開催され「京都議定書」を採択した。

環境経営で真のグローバル企業へ

門田当社は、2015年1月末にドイツBK Giulini GmbHおよびその関係会社の水処理薬品事業等を買収し、欧州を中心とした海外事業の基盤を強化しました。また、昨年度は韓国において、現地資本向けでは初となる超純水供給事業を開始しました。その結果、当社グループの海外売上高比率は2014年度で21%でしたが、2015年度は30%と急速に拡大してきています。当社グループもE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の視点から、あらゆる面でグローバル企業にならなくてはいけないと実感しています。

國部世界では、環境を何らかの経済価値に結び付ける基準作りが進みつつあります。情報開示では統合報告書において、企業は「環境」も一つの資本として製品・サービスとの関係性を把握し、それが長期にわたる価値創造につながることを説明するよう求められています。また、ISO14001は事業戦略との連携を意識した改定を進めており、環境負荷低減が企業価値向上や事業リスク低減につながる仕組みを規格化しようとしています。グローバル企業にとっては、環境に関するグローバルスタンダードに沿った行動を取っていくことが、これからは大切になっていきます。

栗田工業株式会社 代表取締役社長 門田 道也

栗田工業株式会社 代表取締役社長
門田 道也

門田当社グループがグローバル企業として社会的責任を果たし期待に応えるためには、ESGの視点でグローバルでの基準に対応した仕組みを構築し、PDCAサイクルで継続的に改善し、結果について開示することが必要です。「環境」は異なる文化や背景に関わらず普遍的な共通性があるので、できるだけシンプルでわかりやすいグループ共通の考えや方針を打ち出していきたいと思います。また、当社グループには、水と環境を通して社会に貢献していくという高い意欲を持った人が集まっています。彼ら社員一人ひとりが事業活動を通じて地球環境への貢献をより強く実感できるようにしていきたい。そのためには、環境に関して世界はどのような枠組みで動いているかまで視座を高め、自分達が対峙する問題やリスクを理解していくことが大切です。経営として、事業の位置づけを整理し、当社の存在意義は何なのかについて改めて確認することで、クリタが果たすべき貢献の在り方を明確にし、グループ全体に伝えていきたいと考えています。

國部 克彦(こくぶ かつひこ)

神戸大学大学院経営学研究科教授。2014年同研究科長に就任。1990年大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了。博士(経営学)。経済産業省委託「環境ビジネス発展促進等調査研究・環境会計委員会」委員長、環境省「環境会計ガイドライン改訂検討会」委員等の各種委員を歴任。ISO/TC207/WG8議長。環境経営・会計およびCSR経営を世界的にリードする第一人者。