Press Release

2014年

2014年7月30日

医薬品製造プロセス向け 高機能・低コストの「精製水製造システム」を開発
~生菌増殖抑制により高い品質と安全性を追求した水処理システム~

栗田工業株式会社(東京都中野区 社長:中井 稔之)は、生菌の増殖抑制効果が高く、医薬用水の品質向上を実現する「精製水製造システム」を開発し、販売を開始しました。本システムは、独自開発した特殊UV(紫外線照射)装置を用いることで、生菌の発生源となる活性炭塔を不要とし、系内の生菌数を極めて低いレベルに抑えることができます。また、システム構成を簡素化することでイニシャルコストも削減します。当社では、医薬産業向けに本システムの適用を推進し、お客様の製品品質向上やコストダウンのニーズに幅広く応えていきます。

医薬品の製造プロセスでは、バリデーション(*)に対応した高いレベルの品質管理が求められます。「精製水」は医薬品の原料となる純水や装置・器具の洗浄水として使用されますが、イオン交換や膜ろ過などの技術を組み合わせたシステムにより原水中のイオン成分や不純物を除去して製造されます。安定した水質確保のために適切な生菌管理が不可欠であり、製品に高い品質と安全性を追求されるお客様では、精製水製造システム出口の菌管理だけでなく、各装置における菌の繁殖リスクを低減し、システム全体での管理強化を強く求められています。

これに対し、当社では80℃以上の熱水で全ての装置・配管を間欠式で殺菌するシステムを他社に先駆けて実用化し、現在まで広く展開してきました。今回開発した水処理システムは、紫外線殺菌から逆浸透膜処理を経て、連続式電気脱イオン装置(以下KCDI® )により高純度の精製水を得るもので、殺菌性能が高い「特殊UV装置」を新たに採用することで、菌の温床となる活性炭塔を不要としました。そして、従来の熱水殺菌に加え、紫外線による殺菌を組み合わせることで高い処理効果を発揮し、系内の生菌数をほとんど検出ができないレベル(1個/mL以下)に抑えることに成功しました。さらに、KCDI® の酸化劣化を引き起こす残留塩素に対し、特殊UV装置の働きで遊離塩素だけでなく結合塩素の除去も可能とし、装置の性能維持や安定運転にも寄与します。

また本システムは、従来システムと比べて、活性炭塔のほか、軟水器や脱気膜などを排したシンプルな装置構成であり、装置導入のイニシャルコストを20%以上削減するとともに、約6時間を要していた熱水殺菌の所要時間を半減します。加えて、規格型の装置システムであるため省スペースを実現し、据付前に当社工場でバリデーションと試運転を実施することで現地工事期間も短縮します。

当社では30年以上に渡り、医薬産業向けに、精製水のほか、滅菌精製水、注射用水の製造システムを数多く納入し、国内トップクラスのシェアを有しています。今後は、本精製水製造システムを戦略商品の一つと位置付け、国内市場のさらなる深耕に取り組むとともに、医薬関連の市場拡大が予測される海外も視野に入れ、お客様のニーズをより幅広く捉えて市場展開を図ってまいります。

  • *バリデーション
    法令で定められた医薬品、医薬製造設備の製造および施工基準。設計、施工、試運転の各段階で、設備や性能ならびに手順、工程、品質管理の方法などが基準の要求レベルを満たしているかを科学的に検証し、医薬品の品質や安全性に関するさまざまな検査データを記録して文書化することが求められる。
  • *補足:医薬品製造プロセス向け 精製水製造システム(システムフローと外観)

医薬品製造プロセス向け 精製水製造システム(システムフローと外観)

  • システムフロー(装置構成)

従来システムから装置機器の構成数を8から6に削減し、フローを簡素化した。

(主要な装置)

♦特殊UV装置

  • 殺菌性能に優れる紫外線照射装置
  • 遊離塩素だけでなく活性炭では除去できなかった結合塩素も除去できるため、後段装置の酸化劣化 も防止する。

♦2段逆浸透膜装置

  • 2段連続で逆浸透膜を採用した構成により、イオン、塩類などを効果的に除去する。
    これにより軟水器・脱気膜などの設備が不要となり、省スペース化も図れる。

♦KCDI(連続式電気脱イオン装置)

  • 電気再生方式により薬品処理が不要であり、連続運転のため安定した水質の精製水を製造できる。
  • システム外観

写真:システム外観