Press Release

2011年

2011年10月24日

低濃度排水にも適用可能な担体型嫌気性処理装置
「バイオセーバーTK」を開発、本格販売開始
~排水処理における省エネルギーと廃棄物削減を実現する生物処理技術~

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:中井 稔之)は、従来の嫌気性生物処理(*)では処理が困難であった低濃度有機排水を、嫌気性微生物を付着させた担体を用いて浄化する新たな生物処理技術「バイオセーバーTK」を開発し、販売を開始しました。

食品工場・ビール工場を中心に有機排水の処理では、これまでグラニュール(菌体の自己造粒体)を用いた嫌気性処理方法が広く普及しています。しかし、有機物濃度が低い排水や、化学工場のメタノールなど単一組成の排水では、グラニュールの維持が困難で安定運転が難しく、嫌気性処理を適用できないという課題がありました。
今回開発した嫌気性処理技術は、新開発の担体を用いることで、従来法では処理が困難であった低濃度排水にも適用でき、排水処理の省エネルギーと廃棄物量の削減を実現するものです。
さらに、有機排水の処理に広く適用されている好気性処理(*)と比べても、(1)反応槽の大きさは1/3~1/5以下、(2)動力費は約半分、(3)余剰汚泥の発生量は1/4以下、(4)発生するメタンガスを燃料として再利用可能などのメリットがあります。

  • *)排水中に含まれる有機物の処理には微生物を利用することが一般的であり、微生物の種類により酸素がある状態で有機物を分解する好気性処理と、酸素を使わない嫌気性処理の2つに分けられます。嫌気性処理は、好気性処理と比べて、消費動力が少ない、余剰汚泥の発生が少ない、発生するメタンガスが利用可能、高負荷処理が可能で反応槽がコンパクトなどのメリットがあります。

以上

  • 「バイオセーバー」は栗田工業の登録商標です。
    添付資料:バイオセーバーTKについて

バイオセーバーTKについて

1. 開発の背景

  • 1)嫌気性処理を、有機物濃度が低い排水や、メタノール・酢酸等の単一組成の排水(以下「単一組成の排水」)の処理に用いると、グラニュールの維持が困難で安定処理が難しいことが技術的課題になっていました。
    よって、現状では嫌気性処理の適用は中高濃度排水にとどまっており、広く有機排水に適用でき、安定的な運転を実現する技術が求められていました。
  • 2)これまで、嫌気性処理は主に高濃度排水が継続して発生する食品工場、ビール工場などに適用されてきましたが、省エネルギーや廃棄物削減のニーズが急速に高まる中で、これまで嫌気性処理を適用してこなかった市場・業種においても嫌気性処理装置へのニーズが高まっていました。

2. 当社の取り組み

当社は、排水処理における生物処理技術で国内トップクラスの実績を持ち、嫌気性処理についても主に国内向けに数多くの処理装置を納入しています。
当社では、嫌気性処理の適用範囲・市場の拡大を図るため、これまで培ってきた技術および装置運転ノウハウを活かして、低濃度有機排水にも適用可能な嫌気処理装置「バイオセーバーTK」を開発し、販売を開始しました。

3. 担体型嫌気性処理装置「バイオセーバーTK」について

流動性を持つ嫌気処理用担体を反応槽に充填し、担体表面に嫌気性微生物を付着させることで、有機物濃度が低い排水や単一組成の排水に対しても、高負荷かつ安定的な処理が可能で、有機物を高効率に除去(除去率80%以上)できます。
また、様々な条件(濃度・成分・温度)に適用でき、負荷変動にも強く、これまで実績が多い食品系の工場の有機系排水だけでなく、化学工場、製紙工場、液晶・半導体工場の有機系排水など、幅広い性状の排水に適用することができます。

さらに、好気性処理と比べ、(1)反応槽の大きさは1/3~1/5以下、(2)動力費は約半分、(3)余剰汚泥の発生量は1/4以下、(4)発生するメタンガスを燃料として再利用可能、というメリットがあり、運転コストも大幅に削減できます。

<嫌気処理用担体の特徴>

開発した担体は樹脂製で、担体表面に微生物層を形成する構造です。また、担体は槽内で緩やかに流動し排水を処理しますが、微生物層の解体、系外への流出が起こらない構造となっています。

本担体は以下の特徴を持ちます。

  • (1)表面に凹凸があり、微生物保持量が多い。
  • (2)水に比べ重く、沈降速度が速い。
  • (3)バイオガスが抜けやすい構造。

4. 今後の展開

今後、省エネルギー・省廃棄物に貢献する嫌気性処理へのニーズはますます高まり、「バイオセーバーTK」の需要も拡大していくと予測されます。当社では、嫌気性処理をより幅広い産業分野に適用していくことを目指し、排水処理設備の新設や既設の能力増強などに本装置を適用していきます。
また、好気性処理も含めて、これまで培ってきた生物処理の技術・商品力強化に継続して取り組み、国内をはじめ、水需要が急拡大している海外市場において、産業排水処理分野での事業拡大を図っていきます。