Press Release

2011年

2011年3月9日

廃棄物とCO2排出量の削減に貢献する電気浸透脱水機「ハイドプレス®E」を開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:齊藤 浩)は、お客様の工場・事業所における廃棄物とCO2排出量の削減に貢献する新型電気浸透脱水機「ハイドプレス®E」を開発し、販売を開始しました。
本装置は、汚泥に電気をかけ、生じた電気浸透流と圧力を利用して脱水を行う当社独自の汚泥脱水技術で、電気浸透流により汚泥をプラスの電極側へ、水をマイナスの電極側に移動させることで高い脱水効果を発揮し、従来技術と比べて汚泥発生量を最大で約50%削減できます。また、これにより脱水汚泥を乾燥・焼却処理するためのエネルギー使用量も低減でき、CO2排出量を約3分の1に削減することが可能です。
当社では、環境負荷低減効果の高い技術として、国内外の幅広い業種のお客様に向けて本技術の適用を推進していく予定です。

1. 開発の背景

近年、廃棄物の削減に向けて、汚泥発生量の低減に重点的に取り組まれるお客様が増えています。各種産業排水などで発生する汚泥は多くの水分を含んでいるため脱水処理した後、その多くは廃棄物として処理されますが、現在主流であるベルトプレス脱水機や遠心脱水機に代表される機械方式の脱水機では脱水後の含水率は80%程度が限界であり、含水率を低下させて汚泥発生量を削減できる脱水技術のニーズが高まっていました。
また、工場内で脱水汚泥の乾燥・焼却処理を行っているお客様では、化石燃料が消費されてCO2が排出されるため、燃料コストやCO2排出量の削減も求められていました。

2. 当社の取り組み

(1) 当社の考え

当社ではこれまでも機械方式の脱水機を開発し、お客様に多数納入してきましたが、上記の廃棄物およびCO2削減などの環境負荷低減ニーズに対応するために、電気浸透脱水処理であれば、従来技術では脱水しにくい有機物汚泥でも含水率を大幅に低減し、汚泥発生量を削減することが可能になると考え、電気浸透脱水技術の開発に着手しました。

(2) 新型電気浸透脱水機「ハイドプレス®E」について

従来の機械方式の脱水機は汚泥に圧力を加えて水を絞り出す方式ですが、今回の電気浸透脱水機は装置の内部にプラスとマイナスの電極を設置し、汚泥に電気をかけ、生じた電気浸透流と圧力を利用して脱水を行う当社独自の技術です。本技術により、汚泥濃度や汚泥性状の変動に対しても効率よく安定した低含水率の脱水を可能にします。

1) 脱水原理

水分を含む汚泥を電極に挟んで直流電圧を作用させると、負の電荷をもっている汚泥粒子はプラス(陽)極付近に集まり、正の電荷を帯びた水分子はろ布を通してマイナス(陰)極側に移動します。

  • (1)汚泥に直流電圧を印加する
  • (2)電気浸透流により汚泥粒子はプラス極側へ、水はマイナス極側に移動する
  • (3)マイナス極側から脱水する
  • マイナス極側に接するろ布近傍では汚泥粒子はマイナス電極に反発してろ布表面での閉塞が少なく、ろ液がスムーズに流れるという特徴を持つ。

2) 技術の特徴

  • (1)従来の機械方式の脱水機では脱水後の汚泥の含水率は80%程度であるのに対し、本技術では最大で50%の含水率を達成できます。また、従来技術では脱水しにくい有機物汚泥でも含水率を大幅に低減できます。
  • (2)電極ごとに電圧・電流条件が可変のため、最適な脱水率にコントロール可能です。
  • (3)含水率低下で汚泥が自燃性の状態となります。それに伴い、焼却時に補助燃料が不要となります。
  • (4)電気浸透作用時の発熱により、脱水汚泥の腐敗防止および、病原菌の殺菌の高い効果が得られます。
  • (5)装置の構造がシンプルで、電極の洗浄/交換などメンテナンスも容易です。
  • (6)装置内部に設置している電極の寿命が3~4年と長く、消耗が遅いため、ランニングコストを大幅に低減できます。

3. 導入効果(お客様のメリット)

本技術は、脱水機の新設や、既設脱水機と組み合わせる場合など様々な適用ができ、従来技術と比較して以下のメリットがあります。

  • (1)汚泥発生量を最大で約50%削減し、廃棄物処理コストを大幅に低減できます。
  • (2)汚泥の含水率が低く補助燃料が不要なため、脱水汚泥を乾燥処理や焼却処分している場合は、石油や重油などのエネルギー使用量を大幅に低減し、CO2排出量を最大で約3分の1に削減できます。
  • (3)発生汚泥は、堆肥化やバイオマス燃料の原料など様々な用途に利用できます。

4. 今後の展開

廃棄物およびCO2排出量の削減に向けて、当社では汚泥発生量低減のニーズを持つ国内外のお客様に対して幅広く「ハイドプレス®E」を展開していきます。特に、有機物主体の排水で汚泥発生量も多い、食品・化学・自動車・電子(液晶)の業種のお客様では、本技術適用のメリットが大きいと考えており、重点的に拡販に取り組んでいく考えです。
また、本技術の適用事例について、第45回「日本水環境学会年会(2011年3月)」にて発表を行う予定です。

以上