Press Release

2010年

2010年5月24日

薬品・装置・メンテナンスの総合力を活かし中国における産業排水の再生の取組み強化
~広汽豊田汽車有限公司における水資源の有効利用の実現~

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:齊藤 浩)は、地球規模の水問題の本質とは、単に水の量が不足しているという問題ではなく、地球上を循環する水資源をいかに持続的に有効に活用していくかという、水の使い方にあるのだと考えています。そこで当社は、長年にわたり事業を展開してきた「産業の水」の分野において、お客様にとって必要な時に、必要な場所で、必要な質と量の水を使えるようにする「水のマネジメント」を提案し、水資源の有効利用を実現することで、お客様が取り組む生産性向上、環境負荷低減などに貢献していくことを目指しています。

このような中、昨年4月よりスタートした中期経営計画「MP-11」において、「グローバル事業の拡大」に取り組んでおり、近年では特に中国を重要な市場と位置付け、電子産業はもちろん、自動車、食品などの一般産業をターゲットに、産業排水の再生による水資源の有効利用を提案・実現していく事業を強化しています。こうした中国における取り組み概要と、当社の強みである水処理薬品、装置、メンテナンスなどの総合力を活かした代表的な排水再生の事例として、「広汽豊田汽車有限公司(広汽トヨタ)」向けの当社の取り組みをご紹介します。

1. 中国における当社の取り組み

1)事業展開の歴史

  • (1)古くから当社は、中国における産業排水処理に取り組んできました。1974年の武漢製鉄所プロジェクトに始まり、1978年の宝山製鉄所プロジェクトに参画するなど、用水・排水に関わる水処理装置や水処理薬品の実績を、30年以上にわたり積み重ねてきています。
  • (2)現在は、水処理薬品、水処理装置、同メンテナンスの事業を併せ持つ強みを活かし、総合的な水処理ビジネスを展開するとともに、国内で評価の高い(実績豊富な)技術・サービスを提供することで、お客様のニーズに応える取り組みに注力しています。
  • (3)本年4月、中国を中心とした海外市場において、産業排水を回収し再び使用できるようにする「水の再生」や、排水中に含まれる有価物を資源として回収し再び使用できるようにする「資源の再生」を切り口に事業を推進する新組織「水・資源再生プロジェクト部」をプラント事業本部に設置しました。

2)事業拠点の整備

当社は、国内同様に中国市場においても、水処理薬品、装置、メンテナンスを組み合わせて水処理に関わる総合的な事業を展開するために、各拠点を整備しています。

  • (1)水処理薬品の製造・販売の拠点
    「栗田工業(大連)有限公司」(1995年設立)
  • (2)水処理装置の製造・販売・メンテナンスの拠点
    「栗田超純水設備(上海)有限公司」(2001年設立)
    「栗田工業(蘇州)水処理有限公司」(2004年設立)

3)産業排水の再生の取り組み

現在、中国では、高い経済成長に伴い水の使用量が急激に増加し、水不足や水汚染などの問題が顕在化しており、水回収やCOD総量規制などに関わる法規制が強化されています。当社は、こうした環境負荷低減や水使用量の削減ニーズを受け、自動車や鉄鋼、電子産業など幅広い業種のお客様向けに、工場等の排水を回収して再利用する製品・サービスを提供し、以下のような排水回収処理の実績を積み重ねています。

2. 事例紹介:「広汽豊田汽車有限公司」向けの「水マネジメント(排水再生)」

1)「広汽豊田汽車有限公司(広汽トヨタ)」の紹介

当社のお客様である「広汽豊田汽車有限公司」は、広東省広州市に位置する自動車生産販売会社です。同社工場は世界最新鋭の設備を導入した、中国有数の自動車生産拠点となっています。同社は、「環境トップランナーの実現、良き企業市民として地域、社会へ貢献」を企業方針とし、環境改善の取り組みを積極的に推進しています。

2)「水マネジメント(排水再生)」の概要

当社は、2008年12月に広汽豊田汽車有限公司の工場に、RO膜装置、UF膜装置、連続活性炭塔などからなる「排水回収・再利用設備」(最大処理能力4,850トン/日)を納入しました。本設備により、工場の一日当たり排水処理量(排水処理場で処理した工場排水量)およそ3,000トンの70%にあたる2,100トンを回収し、再生処理し、その処理水を塗装循環水や冷却水などの補給水(工業用水)として循環再利用しています。さらに残りの約30%にあたる排水(RO膜の濃縮水などの濃厚排液)についても、排水中のCOD(排水中の有機物など)成分を除去し、場内用水などに有効利用を図っています。

一方、これら設備面だけではなく、設備を安定かつ効率的に運転するために、RO膜処理を安定化させる薬品や、再生処理をした循環水や冷却水などの汚れ・腐食防止の薬品など、水処理薬品面からもサポートすることで、工場全体の最適な「水マネジメント」を実現しています。

3)主な商品・技術の解説

  • (1)RO膜、UF膜処理による排水回収システム
    お客様の水質・水量を考慮した上で、お客様の様々な工程の排水を回収して再利用可能な水へと処理する技術として、RO膜やUF膜などの水処理装置を組み合わせた最適な水処理システムを構築し、提供しています。
  • (2)連続活性炭塔
    活性炭によりCOD成分を効果的に除去し、環境負荷を低減する高度処理装置です。
    上向流通水および多段式処理方式など当社独自の技術・ノウハウを採用することで、活性炭の利用効率を高め、連続処理ができます。
    本装置は国内では多くの分野に実績があり、このたび中国ではじめて適用しました。
  • (3)RO膜処理薬品
    排水回収・再利用設備で使用するRO膜に付着する汚れや目詰まりによる透過水量低下を防止し、処理水質を最適な状態に保つことで、RO膜処理の安定化に貢献する当社独自の水処理薬品です。

<当社が納入した排水回収・再利用設備>

連続活性炭塔

▲連続活性炭塔

RO膜装置

▲RO膜装置

3. 今後の展開

今後も、中国における環境負荷低減や水使用量の削減ニーズはさらに高まり、排水の再生(回収・再利用)に関わる市場も拡大していくと予測されます。本年4月に発足した「水・資源再生プロジェクト部」が中心となり、電子産業をはじめ、自動車、食品、特に規制が強化されているメッキなど、様々な業種のお客様に「水マネジメント」を通し、水資源の有効利用を実現し、お客様の生産性向上や環境負荷低減などに貢献していくことを目指します。

以上