Press Release

2009年

2009年10月2日

包接技術を新分野に適用
コンデンサの安全性を高める電解液噴出防止材を世界で初めて開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:齊藤 浩)は、独自の包接技術を応用することにより、電気的異常時にアルミ電解コンデンサから噴出する電解液を吸収し、コンデンサの安全性を向上できる、アルミ電解コンデンサ用電解液噴出防止材を世界で初めて開発しました。

1. 開発の背景

アルミ電解コンデンサは、異常な電圧がかかると、コンデンサ内の温度が上昇し、内部の電解液が蒸気化して内圧が上昇します。一定の圧力以上に内圧が上昇すると、コンデンサに設置されている圧力弁が作動し、蒸気化した電解液がコンデンサの外部へ急激に噴出してきます。
アルミ電解コンデンサは、幅広く一般家庭の照明器具や電気製品に使用されており、蒸気化した電解液の噴出や臭気が消費者から発火であると誤認されることがまれにありました。また同様に、蒸気化した電解液がプリント配線基板に付着して回路のショートという問題も起こっていました。

2. 開発製品について

今回開発した電解液噴出防止材は、当社が約20年来にわたり、水処理薬品および燃料電池用燃料の安定化などの用途に適用してきた「包接技術」を応用して開発したものです。本製品をコンデンサに設置することで、コンデンサの外部へ急激に噴出してくる高温で蒸気化された電解液成分を瞬時に吸収し、上記の問題を解決しました。
本製品の特長は以下の通りです。

  • 1)噴出する電解液を瞬時に吸収することができる
    • 電解液の噴出や臭気の発生を抑制し、発火であると誤認されない状態にできる。
    • プリント配線基板への電解液の付着を防止し、回路をショートさせる問題を解消できる。
  • 2)環境に配慮した製品である
    • 「RoHS指令」に対応した製品である。

3. 適用市場と今後の展開

  • 1)適用市場
    本製品は、電解液を使用するアルミ電解コンデンサ全般に適用可能です。特に家庭内で長時間使用される照明機器、家電製品の電源回路やACアダプタに使用されるアルミ電解コンデンサ向け、さらには高い安全性が要求される大形アルミ電解コンデンサ向けへの適用を予定しています。
  • 2)今後の展開
    コンデンサメーカーのニチコン株式会社(本社:京都市中京区 社長:荒木 幸彦)へ、当社の製品供給を開始し、本年度中(2010年3月)の量産化を目指していきます。
  • 補足説明
  • 1)「包接技術」とは
    分子の集合体、または空孔を持つ分子(ホスト)の中に、他の分子(ゲスト)が一定の組成比で組み込まれ、特定の結晶構造を形成している包接化合物を作る技術。ホスト分子の組み合わせによって、危険物の安定化や物質の効力を長期持続させるといった効果がある。芳香剤や消臭剤など、家庭用品にも適用されている。
  • 2)「RoHS指令」とは
    電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についての欧州連合(EU)による指令である。鉛などの6物質が対象物質となっており、2006年7月以降はEU加盟国内において、指定値を超えて含まれた電子・電気機器を販売することはできなくなっている。

以上