Press Release

2006年

2006年3月14日

ボイラの給・復水系配管の腐食減肉を抑制する「オキシノン®MFシリーズ」を開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:藤野宏)は、純水給水ボイラの給・復水系の配管・機器類の腐食による減肉を抑制する水処理薬品「オキシノン®MFシリーズ」を開発しました。

1. 開発の背景

近年、純水と蒸気凝縮水との混合水を給水とする中・高圧級の発電ボイラや新設の発電設備の多くを占めるガスタービン・コンバインドサイクル発電設備の低圧ボイラで、給水・復水系統の配管やボイラ蒸発管などの内壁の減肉が進行し、配管を更新せざるを得なくなったという障害事例が多く報告されています。減肉によって給水配管や給水加熱器などが破損すると、ボイラの運転停止による工場の操業停止や人的被害の発生といった重大事故を引き起こす可能性があります。

減肉の要因としては、配管内の乱流や高流速などによる物理的な要因と、水中の溶存酸素の共存やpHの低下による化学的な要因(腐食)の二つに大きく分けることができます。水中の溶存酸素を取り除いて、短期間で配管に孔が開く激しい腐食を抑えた場合でも、純水のようにpHが中性の場合、水が接する配管表面の酸化鉄の溶解度が大きくなるため、安定な防食皮膜が形成されにくく、乱流や高流速が加わる条件では酸化鉄とその下の地金部分がともに水に溶解して減肉が進行します。

さらに、近年では水の「温度」も腐食による減肉の要因として重要となっています。最近の調査事例では、給水の温度が90~180℃、特に130~150℃の温度域で進行している例が多いことがわかってきました。これは上記の酸化鉄の溶解度がこの温度領域で最も大きくなるためとされています。発電ボイラでは、給水を加温することが通常行われており、給水はこの温度域となります。また、ガスタービン・コンバインドサイクル発電設備の多重圧式の排熱回収ボイラ(*)では、設備内の低圧ボイラの運転温度を腐食の発生しやすい130~150℃付近に設定している例が多くみられます。また、その給水・ボイラ水のpH上昇処理も、構造上の制約から、りん酸ナトリウムなどの固形アルカリの使用を避けて、アンモニアや中和性アミンなどの揮発性のアルカリのみで行っている例が多く、アンモニアや中和性アミンのpH低下は比較的大きいため、減肉が進行する環境に陥りやすいといえます。

  1. (*)1基に高圧・(中圧・)低圧と複数の運転圧力・温度のボイラが設置され、ガスタービンの高温の排気ガスから余熱を回収して蒸気タービン駆動用の蒸気を発生させ、発電設備全体の熱効率を向上させています。

2. 「オキシノン®MFシリーズ」について

当社では、ボイラ内や給水・復水系統での腐食を抑制する水処理薬品として、これまでも給水・復水のpHの低下を防止する中和性アミンを主原料とする復水系防食剤「オキシノン®Mシリーズ」を販売してきました。今回当社が開発した「オキシノン®MFシリーズ」は、「オキシノン®M」のpH低下防止機能を発展させたものです。給水・復水のpHの低下を防止する中和性アミンのうち、減肉が発生しやすい温度域でpHを最も高くできるものを主剤として選定して配合しています。

<オキシノン®MFシリーズの特長>

  1. (1)減肉の発生しやすい温度域でpHが最も高くなるように設定しています
  2. (2)水と接する配管表面の酸化鉄皮膜を安定化させて防食性を高めます
  3. (3)高温条件下でも熱安定性が高く、給水・ボイラ水の水質への影響を最小化します

3. 「オキシノン®MFシリーズ」の市場

当社では、ボイラの給・復水系配管類腐食抑制水処理剤の市場は約50億円であり、そのうち「オキシノン®MFシリーズ」を適用する市場は約10億円と想定しています。平成18年度の売上高は1億円を予定しています。

4. 今後の予定

当社は、ボイラ本体や蒸気配管など、ボイラ設備全体の腐食やスケールといったトラブルを防止する様々な水処理薬品・機器類をラインナップしており、お客様の安定操業の実現と生産性の向上に貢献してきました。現在、当社のお客様の工場・事業所では、重油価格の上昇に伴う蒸気製造コストの上昇、エネルギー管理指定工場の枠組み変更や「エネルギーの仕様の合理化に関する法律(省エネ法)」改正などの法規制強化に対応するため、最大のエネルギー使用箇所であるボイラ設備において、燃料費低減・省エネ・CO2削減に繋がる様々な対策が実施されています。それに伴って、ボイラの水処理・水質管理の重要性がますます高まってきました。

当社は、今後も「オキシノン®MFシリーズ」などの新商品の開発はもちろん、ボイラ設備の最適化に繋がる技術・サービスを提供し、お客様の新たな課題の解決に貢献していきます

以上