Press Release

2005年

2005年3月23日

水性塗料に対応した水処理剤「クリスタック®B310」の開発

栗田工業株式会社(本社:東京都新宿区 社長:藤野宏)は、自動車工場の塗装ブースで使用される水性塗料を処理するための水処理剤「クリスタック®B310」を開発しました。既に5件の実装置試験を行い、良好な結果が得られたため、本格的な販売を開始いたします。

【要旨】

自動車に塗料を噴霧する塗装ブースでは、塗装不良を防止するため、ブース内に含まれる余剰塗料を吸引し、「循環水」に捕集させています。「クリスタック®B310」は、この循環水に含まれる塗料を分離・回収処理する水処理剤です。
塗装ブースで使用される塗料は、環境負荷低減という観点から、近年、従来の溶剤系塗料から有害なVOC(揮発性有機化合物)を含まない水性塗料に切り替わりつつあります。しかし、水性塗料は溶剤系塗料と性質が大きく異なるため、従来の水処理剤では循環水中の塗料を充分処理できない場合があり、水性塗料に対応した新しい水処理剤が求められていました。「クリスタック®B310」は優れた凝集効果を発揮し、循環水を常に清浄な状態に保つことによって塗装品質の安定化に貢献します。また、循環水の最終処理工程である総合排水処理設備への負担も軽減しますので、水質汚濁防止はもちろん、余剰塗料由来の廃棄物の削減も可能となります。

【本文】

1. 開発の背景

自動車の塗装ブースには、塗装不良防止を目的として、ブース下部に空気中の余剰塗料を吸引し、循環水に捕集させる装置が設置されています。この循環水に薬剤(塗装ブース循環水処理剤)を添加して捕集した余剰塗料を分離・除去し、処理した水を循環水として再利用しています。塗料が従来の溶剤系から水に溶けやすい水性に変わることによって固液分離が困難になり、循環水中に塗料が残留・蓄積することから、次のような問題が顕在化してきました。

  1. 塗装品質の低下
    循環水の高粘性化や発泡などが原因となって循環水量が低下し、空気中の余剰塗料を完全に捕集できなくなり、その結果、ブース内に残留した余剰塗料によって塗装不良が発生する。
  2. 総合排水処理設備への負荷増加
    塗料によって循環水のCODやBODの値が高くなり、総合排水処理装置の負荷が増加する。
  3. 廃棄物量の増加
    水性塗料は親水性が高いため、排水処理(凝集・沈澱処理)の過程で発生する汚泥(固形分を主とする)中の含水率が高くなり、廃棄物量が増加する。

そのため、これらの問題を解決する、水性塗料に対応した水処理剤が求められていました。

2. 「クリスタック®B310」について

今回当社が開発した「クリスタック®B310」は以下のような特長をもち、従来の問題を解決するだけでなく、生産性の向上などにも貢献することが可能です。

  1. 「クリスタック®B310」の特長
    1. 高い凝集・分離効果
      塗料粒子と反応し、粒子表面に軽く強固で疎水性に優れた皮膜を形成するため、余剰塗料の分離速度が高くなり、安定した分離効果を発揮します。特に、塗料に含まれる界面活性剤などの発泡性物質を凝集する力が高く、循環水の発泡障害も大幅に抑制します。
    2. 高い汎用性
      塗装ブース設備の規模、形式に関係なく安定した効果を発揮します。また溶剤塗料に対しても水性塗料と同様の効果を発揮するため、水性塗料と溶剤塗料の混合処理系での適用も可能です。
    3. 高い安全性
      法的規制の必要な素材を使用しておらず、また、アルカリ性液体でかつ低塩類濃度であるため、ブース設備などへの腐食の問題がありません。
    4. 低コスト
      自動車の塗装ブースに適用した場合のランニングコストは、自動車1台あたり80~100円台と、従来の120~150円台(弊社水性塗料向け薬剤)と比べ低コストです。
  2. 「クリスタック®B310」の効果
    1. 塗装品質の安定化が可能
      循環水を常に清浄に保つことによって塗装ブース内の余剰塗料を安定して除去することが可能となり、塗装品質を安定化します。
    2. 総合排水処理設備の負荷低減が可能
      循環水中のSS(浮遊懸濁物)濃度を従来の1/5~1/10に低下させると共に、CODやBODも1/5に低減させることが可能となるため、総合排水処理設備の負荷も低減します。
    3. 廃棄物発生量の低減が可能
      分離・除去した塗料成分は疎水性が高いため脱水処理しやすく、含水率を従来より10~20%低減できるため、廃棄物となる汚泥量を大幅に低減します。

3. 「クリスタック®B310」の市場について

「クリスタック®310」の適用先である水性塗料を導入している塗装ブースは、現在は全体の約30%程度であり、市場は年間約4.5億円です。水性塗料を導入する工場は年々増加しており、全工場に導入された場合の市場は年間20億円と予想しています。さらに、自動車工場と同様にVOCの削減を進めている電器・金属製品製造業での導入も見込まれるため、将来的には年間25億円程度に拡がると考えています。

4. 今後の事業展開

クリタでは、自動車メーカーおよび塗装ブース設備メーカー、塗料メーカーへの積極的な営業展開を進めており、3年後には5億円の売上高を見込んでいます。

以上