Press Release

2003年

2003年7月24日

高効率脱窒システムを開発 Anammox微生物を粒状化することにより高速処理を達成

栗田工業(株)(本社:東京都、社長:藤野 宏)は、「バイオ技術」を利用した新窒素除去システムを開発しました。このシステムは、Anammox(Anaerobic Ammonium Oxidation) 微生物という、新しく発見された脱窒菌を利用する技術で、従来の硝化・脱窒法と比較して大幅な設備および運転管理コストの削減を可能にする画期的なものです。

従来は、排水中の窒素成分を硝化菌の働きで硝酸態窒素(NO3-N)まで全量酸化した後に、脱窒菌の働きでBOD源を与えて窒素ガスに転換していたため、酸素供給用の曝気コストや脱窒用有機物(メタノール)のコスト、余剰汚泥の発生量などが課題でした。

本システムでは、原水中の窒素成分の約半分を硝化菌の働きで亜硝酸まで酸化、その後Anammox微生物がアンモニアと亜硝酸を反応させて窒素ガスに転換します。硝酸までの全量酸化を必要としないため、酸素必要量は従来法の約55%減となります。また、Anammox微生物は独立栄養細菌であるため、脱窒に際してBOD源は不要に、汚泥発生量も70%減と大幅な運転コストの削減が可能となります。

図 従来法(左)とAnammoxによる脱窒の反応経路

Anammox微生物は1990年にオランダのDelft(デルフト)大学の研究者によって発見された微生物ですが、栗田工業は、Anammox微生物利用の先発メーカーであるオランダPAQUES社と提携し、同時に熊本大学工学部古川研究室などと共同でAnammox微生物を日本国内で独自に探索、発見しました。そしてUASBなどの高負荷嫌気処理で培った「汚泥の粒状化(グラニュール化)技術」を組み合わせ、Anammox反応槽の高効率化に成功したものです。

粒状化させたAnammox微生物を利用することによって、汚泥濃度として40,000~50,000mg/Lという高い菌体濃度が保持でき、容積負荷として5~7kg-N/m3/dayを達成。これは、従来の脱窒素法と比較して5~10倍の高負荷処理を可能とするものです。これによって、設置スペース、設備コストの大幅低減も実現しました。また、Anammox菌によるメリットを生かすカギとなるのは、硝化細菌による分解を亜硝酸態窒素の段階で完全に停止させることが必要です。この点についても「亜硝酸酸化細菌」を存在させない独自の技術を開発するとともに、実際のプロセスにおいて「存在しないこと」を簡便にモニタリングできる手法を、DNA分析技術を利用して開発。これらを手法と組み合わせることによって、実用的なシステム化に成功しました。

栗田工業では、新潟県下の下水処理場において、汚泥の嫌気性消化脱離液の窒素処理をパイロット規模で約2年間にわたって実施し、処理効率と微生物の長期安定性を確認したため、本格的な営業展開に着手します。対象分野としては、汚泥や生ゴミのメタン発酵の脱離液、化学・食品系の産業排水、発電所排水など、窒素濃度として200mg/L以上の比較的高濃度な窒素含有排水を想定しています。

なお、パイロット試験の結果については、7月22日より東京ビッグサイトで開催される日本下水道協会主催の「第40回下水道研究発表会」にて発表する予定です。なお、Anammox微生物のグラニュール化については、今年6月11~13日に韓国ソウルで開催されたIWA(国際水協会)主催の窒素除去技術の特別シンポジウム(6th International Symposium on Strong Nitrogenous and Agro-Wastewater)において約100件の発表論文の中から最優秀論文賞を受賞いたしました。

以上